ながさきプレスWEBマガジン

  • Vol.29 マルヒロの「ものはら KURAWANKA Collection」

    波佐見焼の歴史を物語る
    “地層”を重ねて…

     「ものはら」―。登り窯のそばにある、焼き損ないの製品を捨てる場所のことを、そう呼ぶそうだ。長い年月を経た「ものはら」には、焼き物の“地層”ができ、積み重ねられた歴史と伝統技術の上に“今”があるということを、一目で伝えてくれる。

     そんな「ものはら」の名を持つ陶磁器のブランドが、波佐見で新たに誕生した。手がけたのは、「HASAMI」や「馬場商店」などのブランドで知られる、波佐見焼の企業「マルヒロ」だ。波佐見焼の伝統や技を大切にしながらも、現代の食卓やインテリアに馴染むモダンなデザインの陶磁器を手がけるマルヒロは、400年以上の長い歴史を持ち、日常食器のシェア率もトップクラスでありながら、知名度は決して高くなかった波佐見焼の存在を、一躍全国に知らしめた。そんなマルヒロの次なる試みが、国を越え、ジャンルを越え、世界中の人に波佐見焼を使ってほしいという思いのもと手がけた「ものはら」ブランドなのだ。

     最初の製品シリーズの名は、「くらわんかコレクション」。1690~1860年頃、国内の庶民向けの安価な日常食器を、波佐見の巨大な登り窯で大量に生産していた「くらわんか時代」をテーマに、リーズナブルな価格帯の日常食器を提案するシリーズだ。「くらわんか」とは、かつて大型船を相手に酒食を売っていた小舟が、「くらわんか」と叫びながら商いをしていたことに由来し、その小舟で使われていた「くらわんか碗」をはじめ、当時の波佐見焼の磁器生産量は、日本一を誇っていたといわれている。

     アメリカのフォントデザイン会社「ハウスインダストリーズ」とコラボレーションして生まれた、和食・洋食を問わないベーシックで親しみやすいプレートやボウル、コンプラ瓶やティーポットなどの製品たちは、まさに現代における日常使いの食器。モダンな中にも、どこか懐かしさや温かみを感じさせてくれるのは、「ものはら」から出土した「くらわんか碗」の呉須の色や釉薬の風合いを、参考にしているからだろう。ボウルやプレートはすべて入れ子収納でき、プレートがボウルの蓋代わりにも。シンプルな形と豊富なサイズ展開で、さまざまな料理やシーンで活躍してくれそうだ。

     「ものはら」という、先人達が長い年月をかけて残していった“タイムカプセル”。マルヒロのものづくりは、その歴史を紐解き、現代に活かしながら、さらに自分たちも新たな“地層”を積み重ね、波佐見焼に新たな歴史を刻んでいる。

    マルヒロ
    〈本社〉東彼杵郡波佐見町井石郷255
    〈ショップ〉西松浦郡有田町戸矢乙775-7 TEL:0955-42-2777
    http://www.hasamiyaki.jp/monohara/

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