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  • 1カ月遅れのおひな祭り(上五島)

    特別な日の“重開き”
    特別な日の“重開き”

     桃の節句は3月3日です……が、ここ上五島では、1カ月遅れの4月3日がおひな祭りです。なぜ4月3日なのかはわかりませんが、私の母の頃(現在95歳)からずっと、この日がおひな祭りなんですよ。そしてこの日は〝重開き〟が行われます。
     「重開きって何?」ですよね。この日子どもたちは重箱にごちそうを詰めてもらい、海や山に友達と行き、お重(お弁当)をみんなでいただくという、今でいえばお花見です。お重の中身もちょっと特別で、海の物(サザエやミナ)、山の物(つわぶきやお煮しめ)が必ず入ります。それに節句菓子や巻き寿司、押し寿司など、色鮮やかに盛りつけられ、子ども心にワクワク心待ちにしたものでした。もちろん女の子だけでなく男の子もみんなお重をつくってもらっていましたので、あちこちで子どもの声がしたものです。子どもにとって特別な日だったんですね。
     「重箱って何?」と知らない方も多いかもしれませんね。今はお弁当箱もいろいろな形のものがあって、重箱を使うことはあまりありませんが、今年のお花見は重箱にお弁当を詰めて、重開きに出かけてみてはいかがですか?

    *節句菓子…4月に入ると、重開き用に お菓子屋さんが特別に作る和菓子(ぎ ゅうひやよりよりを小さくつくる)。

     

    profile  

    道津 和子 初めて訪れてもどこか懐かしさを感じさせる、アットホームなもてなしの〈前田旅館〉の女将。おしゃべり好きで、上五島のディープな魅力を教えてくれる。旅館では海の幸・山の幸をふんだんに使った料理だけではなく、上五島ならではの郷土料理も味わえる。

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