ながさきプレスWEBマガジン

  • Vol.10 小川凧店の長崎凧

    雲ひとつない青空に、長崎の凧が舞う。赤・白・青の幾何学文様が、眩しく輝く。糸を巧みに操るのは、凧のつくり手・小川暁博さん。「こがん空の綺麗か日は、めったになかばい!あんた、ついとるね!」と小川さんに言われ、何だか誇らしい気持ちになった。こんなにも象徴的で美しい「メイド・イン・ナガサキ」の光景を、新年の幕開けとともに届けられることに、喜びを感じたからだ。

     長崎凧は1600年代前半、出島にやってきたオランダ人の従者である、インドネシア人によって伝えられたとされる。タコではなく「ハタ」と呼ぶ由来は諸説あり、幾何学的な文様が国旗や家紋のような「旗印」のようだからとも、インドネシア語で凧を意味する「パタン」が変容したともいわれている。ただ高く揚げるのではなく、ガラスの粉を塗りつけた「ビードロヨマ」と呼ばれる糸を絡めあい、互いの糸を切りあう「けんか凧」であることも特徴だ。そんな長崎凧の、たった一人の現役のつくり手が小川さんだ。3代目を継いで40余年。労を惜しまずに凧づくりに向き合った結果、良い竹を見極め、自ら採ってくるところまで、そのこだわりが及んだ。和紙の染めも、文様の切り抜きも、ビードロヨマづくりも、全てが手作業。長崎凧独特の洗練された文様は、デザイン界からも注目されているが、その伝統的文様を120以上現代に蘇らせたのも小川さんだというのだから、すごい。「小さか頃から、ハタ揚げがすいとったと。ハタば見とったら、何かワクワクしてくるやろう?」と小川さん。長崎人なら一度は、その「ワクワク」を胸に大空に向かって凧を掲げてみたい。

    つくり手:小川暁博 OGAWA AKIHIRO
    1949年、長崎市生まれ。20代で〈小川凧店〉の3代目となり、以来長崎凧を作り続けてきた。89年、長崎ハタ資料館を開設。93年には県の伝統工芸品として指定された。地元の小学生や修学旅行生へハタづくりの指導を行うなど、文化の伝承にも力を注いでいる。

    小川凧店
    長崎市風頭町11-2 TEL:095-823-1928
    資料館には国内外のユニークな凧も多数展示。
    小川さんの巧みな話術が冴える、楽しい解説も必聴!

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