ながさきプレス

第28回 「見ごろを迎えた唐比ハス園へ、ぶらり。」

九州でも有数のハス園 まもなく見ごろです

 国道251号、飯盛方面から愛野方面に向かう途中に、九州でも有数のハス園―「唐比ハス園」があることをご存知だろうか。約2.5ヘクタールの広大な湿地には、13種類のハスと12種類のスイレンが植えられており、7月中旬頃見ごろを迎えるという。
 長崎市内の中心部から、車で45分程の場所にある唐比地区。右手に橘湾を望みながら、ドライブがてら訪ねるのにちょうどいい場所だ。道中には直売所や、野菜や海産物の無人販売所、人気のたまご屋さんなんかもあって、国道を少しそれると、畑や細い農道も多い。農業・漁業の盛んな、飯盛・有喜・森山らしいのんびりした風景だ。「唐比ハス園」も、そんなのどかな農地に囲まれた場所にあり、テレビなどで話題となった「唐比れんこん」も周辺で育てられている。園の管理・保全をしているのは、「唐比すいれんの会」のみなさん。今回は会長の山下さんとメンバー山崎さんに、ハス園を案内していただいた。

ハス園、訪れるなら 花がひらく朝がおすすめ

 「唐比ハス園」は、唐比すいれんの会の初代会長である山口邦彦さんが、この辺りの湿地帯に、少しずつハスやスイレンを植え始めたのがはじまり。当初はあくまで、山口さん個人が数株のハスで小さく始めたものだったが、次第に美しく咲くハスが話題を呼び、見物に来る人が増えるように。そうして、15年程前会が発足したそう。その後は、旧森山町(現諫早市)時代の町長さんたちの、「ハス園を地域の名所にしよう」という動きなどもあり、会のみなさんと行政が協同して、ハス園の拡大・整備にあたってきた。会のみなさんが主催する「唐比ハス祭り」も、今年で11回目となった。
 整備された木道を3人で歩きながら、両脇のハスたちに目をやる。訪ねたのは6月。7月の最盛期には及ばないが、既にちらほらと、ハスの花はほころび始めていた。「このつぼみは、明日の朝にはパアッと開くやろうね!」と、今にもはちきれんばかりに膨らんだつぼみを手に取る山下さん。ハスの花は、早朝から9時頃までに最も開くそうで、「葉っぱの上でコロコロっと動く朝露が綺麗かとよ~。花も、やっぱり少し朝露に濡れた時が一番美しかね!」と、なかなかロマンチックなことをおっしゃる。品種によって、花の形や葉の大きさも異なり、白、黄色、淡いピンク、濃いピンク…など、好みの品種を探すのも楽しい。

不浄な泥の中からすうっと伸びる、美しきハス

 ハス園にはスイレンも浮かんでおり、こちらは既に見ごろを迎えていた。スイレンの方は、9~10月頃まで楽しめるという。ふと、ハスとスイレンの違いが気になり尋ねると、「葉っぱがべたーっと、水面についているのが『スイレン』。葉も花も水面から上に伸びているのが『ハス』よ。根も全然違って、レンコンとして食べられるのは『ハス』の方さ!」とのこと。
 「ハスはね、綺麗な水の中では小さな花しか咲かんとよ。大輪の花は、汚い泥水の中から咲くとよ」と山下さん。ハスの花が、仏教で象徴的な存在とされるのはそのためで、辛いこと、苦しいこと、悲しいこと…その泥の中から、悟り…美しい大輪の花を咲かせる、という花なのである。ちなみにハスとスイレンを合わせて「蓮華=レンゲ」といい、中華料理で使う「散蓮華(ちりれんげ)」は、お察しの通りハスの花びらの形から名付けられたもの。人と運命を共にする時に使う「一蓮托生(いちれんたくしょう) 」という言葉も、もともとは仏教語で、死後に極楽に浄土しても、同じ蓮華の花の上に生まれ変わることを意味するそう。

島原半島の豊かな自然と 会のみなさんがつくるハス園

 ハス園を散策していると、周囲にはメダカとりや虫とりをする家族連れの姿も。「唐比の湿地帯には、貴重な生物も多く、自然環境も豊かなんですよ」と、お二人。この土地はかつて、橘湾の一部をなす小さな湾であったとされ、海から運ばれてくる土砂やがれきが少しずつ湾の入口に堆積し、約6000年前、海から完全に閉め切られた潟になったと考えられている。閉め切られた潟にはアシなどの植物が堆積、現在のハス園の土壌でもある泥炭層(ピート層と呼ばれる)を形成した。その深さ、何と約50メートルだそうで、「試しに湿地の沼に入ってみんね! 底なし沼よ~(笑)」とお二人におどかされる。地盤もゆるいので、このあたりの畦道でジャンプすると、大地がゆさゆさと揺れるのを感じられるそう。千々石断層も近く、雲仙岳を擁する島原半島の、ダイナミックな自然の息吹を感じた。
 豊かな土壌ではあるが、今も海が近いため、塩害などにさらされることもあるというハス園。それでも「美しいハスを楽しんでほしい」と、会のみなさんが守ってきたこの美しいハス園を、ぜひゆっくりと散策してほしい。

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