ながさきプレスWEBマガジン

  • Vol.20 小野原本店のからすみ

    からすみの季節です

     江戸時代から、越前のウニ、三河のコノワタと並んで、日本三大珍味に数えられる「長崎のからすみ」。ボラの卵を塩漬けし、天日で干して作られるからすみは、独特の芳醇な香りとねっとりとした食感が特徴だ。

     日本では安土桃山時代、中国から長崎に伝来したのが始まりとされ、長崎の名産品として珍重されてきた。そんなからすみに「旬」があるのかと調べれば、ちょうど秋から冬にかけて、ボラが卵を持つという。はからずも今がまさに旬と知り、からすみが生まれる場所を訪ねた。

     長崎市築町にある〈小野原本店〉は、創業1859(安政6)年の老舗。歴史を感じさせる店の建物は、国の登録有形文化財に指定されている。今はからすみがメインだが、元はさまざまな海産物を扱う店だったそうで、古写真には、かつおぶしや干物などを売る昭和初期の店の様子が写っていた。

     生産工場は、店舗から少し離れた場所に。訪れると、目に飛び込んできたのはずらりと並んだ、からすみ、からすみ、からすみ…!干した日数が長くなるほど、黄色から卵特有の濃密な朱色に色づいており、はっきりと違いのわかるグラデーションがお見事。現在は長崎産のボラ以外に、オーストラリア産のボラも使用しているそうだが、「昔はくんち頃にボラが捕れて、12月頃までからすみづくり。それを年末までには売り切ったとよ」と、自ら製造に携わる社長が教えてくれた。繊細な卵の皮を破らぬよう、からすみづくりは全てが手作業。丹念に何度もひっくり返しながら天日干しする作業には、何と3週間~1ヶ月を要するという。まろかやな旨みのある天日塩を用い、しょっぱすぎない、程よい塩加減に仕上げる小野原本店のからすみ。その味わいには、昔から変わらぬ、丁寧な手作業、手間ひまが欠かせない。

    からすみを、もっと身近に

     高級な贈答品、特別な日の食べ物。からすみにはどうしても、そんなイメージを抱きがち。しかし社長の息子で、店長の小野原さんは、「からすみを贈る人が、実はからすみを食べたことがないなんてこともあって…。もっと日常的に、気軽に、からすみを楽しんでもらえれば」と、手頃なスライスでの販売や新商品の開発を行ってきた。中でも、「からすみパスタオイル」はこれまでのからすみへのイメージを覆す商品。パスタに、サラダに、パンに…と、手軽にからすみの美味しさにふれられることが魅力だ。伝統を守るために、まず伝統を知ってもらう機会を。オシャレなパスタオイルが、昔ながらのからすみの味をより多くの人へ伝える。

    小野原本店 Onoharahonten
    長崎市築町3-23 TEL:095-824-0261
    9:00~19:00(日・祝 10:00~18:00) 無休(1/1休)
    「からすみパスタオイル」1,575円/200g
    http://onohara.co.jp/

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