ながさきプレス

第14回 「東彼杵の新茶にであう」

どこまでも茶畑がつづく絶景

 桜も散り、すっかり日も長くなって…春ですね。ついこの間まで、寒々しい裸の姿だった木々に、ぽつぽつと可愛らしい新芽を見つけたり、すっかり白茶けていた原っぱが、嘘のようにみずみずしい緑に覆われていたり。どこもかしこも生命のみなぎりでいっぱいというか、エネルギー全開!というか…。みるみるうちに成長する植物の姿に、何だか元気づけられる想いだ。そういうわけで今回は、まさに新緑まっさかりの東彼杵町へ。名産である「そのぎ茶」の新茶を求め、旅に出た。
  案内をお願いしたのは、〈大場製茶〉の生産者、大場真悟さん。東彼杵インターのすぐそばにある道の駅〈彼杵の荘〉で待ち合わせて、茶畑まで案内していただいた。待ち合わせ場所に現れた大場さんは、想像していたよりも若い人でびっくり!20代の、若き生産者なのだ。
 彼杵の荘を出て、車でひたすら山手の方へ登ってゆく。10分ほど登っただろうか。だんだんと周囲に、茶畑が増えてきた。「着きましたよ!」と大場さんに案内されたその場所は、小高い丘の上の茶畑。斜面に沿うように、どこまでも茶の畝が連なり、その向こうには大村湾の海が広がっていた。茶の緑と、海と空の青。それ以外は何もない。ほんの少し、山の方に登ってきただけでこんな絶景に出合えるとは…お茶のまち・東彼杵の本当の顔を知れたような気がして、感動する。

西九州一の茶畑で、お茶のあれこれを学ぶ

 長崎県の荒茶生産量の、約6割を占める東彼杵のお茶。山間部には多くの茶団地、茶畑が点在している、まさにお茶の町だ。特に今回案内してもらった「赤木茶団地」は、約110ヘクタールの面積をもつ、西九州随一の茶園だという。
せっけん作り  ふと、茶畑を歩きながら、実は自分が「お茶」について何にも知らないことに気づく。大場さんには、初歩中の初歩的質問をぶつけまくりだ。まず目についたのが、茶畑のそばに必ず立っている、扇風機のような装置。あれって何ですか、とたずねると「あれは、霜除けのためのファンです。お茶は霜がつくと、だめになってしまうんですよ」と大場さん。それからお茶のことを、少しずつ話してくれる。「お茶は、植樹して5年目くらいから摘み取れるようになって、10年目くらいから良くなっていく。でも30年くらいになると、次第に味が落ちてくるので、植え替えます。」若すぎても、老いすぎてもだめ、ということか。なるほど。「四月下旬から五月上旬にかけて採れる新茶が『一番茶』、その後六月中旬から七月頃に採れるものを『二番茶』といいます。新芽は、『一芯二葉』といって、一番上の芯と二枚の若葉、ここが一番美味しいんです。」
 なかなかお茶の農園を見る機会なんてないけれど、とても奥が深くて面白い。摘み取る場所や時期はもちろん、毎年同じお茶の木から摘み取るのに、味も毎年変わるというのだから。 せっけん ちなみに、お茶畑の畝が、色の濃いものと薄いもの、きれいなしましまのストライプ状になっているのは、「あれは、機械で摘み取るときの方向です!お茶の種類は同じですよ。茶葉を摘み取る機械が、畝の上を行ったり来たりするときに、押し倒す葉の方向が変わるので、遠目で見るとしましまに見えるんですよ」とのこと。…いやはや、なるほど。何事も、こうして自分の目で見て、知る、ということは楽しいものだ。

西九州一の茶畑で、お茶のあれこれを学ぶ

おいしいお茶の淹れ方と、新しいお茶のはなし 大場さんは茶の本場、静岡の専門的な学校に行き、お茶のことを学んでから家業を継いだそう。「日本茶インストラクター」、「手揉み教師補」という資格もお持ちだ。「手揉みというのは、茶葉を機械ではなく手で揉んで仕上げることです。」若いのに、なんだかすごいなあ…お茶への愛が、ひしひし伝わってくる。インストラクターの資格も持つ大場さんに、せっかくだからお茶の淹れ方も実演で教えていただいた。
旅する長崎・番外編
【二杯分のおいしいお茶の淹れ方】
①茶葉は二人分で6~9グラム、急須と、湯のみ、湯冷まし用のうつわを用意する。
②ポットから湯のみにお湯を入れる。うつわが温まったら、お湯を急須へ。
③急須が温まったら、お湯を一旦湯冷まし用のうつわにとり、急須に茶葉を入れて、再び急須にゆっくりとお湯を注ぐ。一煎目は、低温のお湯で、茶葉の甘みを引き出すのがポイント!お湯の中の茶葉がふくらみ始めた時が、淹れるタイミング!
④湯のみに注ぐときは、「まわしつぎ」といって、二つの湯のみに交互に少しずつ注ぐ淹れ方で。最後の一滴まで、振り落として。二煎目は高温のお湯で淹れると、渋みも味わえる、お菓子に合う一杯に!
淹れていただいたお茶を飲みながら、最後は「新しいお茶」の話を。実は大場さんは、他の若い生産者さんたちと一緒に、新しいお茶の楽しみ方の提案や製品づくりも行っている。〈COMPARISON(コンパリソン)〉と名づけられた商品では、「浅蒸し~朝食とともに」「ろじ~仕事の合間に」など、種類ごとに異なるティータイムを提案する茶葉と、おいしい淹れ方を記したカードを、CDケースサイズのオシャレなパッケージでセットに。いろんなお茶を飲み比べながら、お茶の楽しみにふれられる「入門編」の商品として販売した。この商品は見事、「世界緑茶コンテスト2011」で最高金賞とパッケージ大賞を受賞!今年も夏ごろ、受注生産で販売予定だ。
昨今の農業は後継者不足が問題とされるが、大場さんはちっとも跡を継ぐことに迷いが無さそうだ。むしろ、お茶のことが大好きで、お茶の面白さや素晴らしさを伝えようと、楽しんでいるようにさえ見える。こんな若い農家さんが増えたら、今日見た美しい茶畑の風景も失われず、ずっと受け継がれてゆくのかな…。大場さんと別れ〈彼杵の荘〉に戻り、お茶餡の入った名物「茶ちゃ焼き」を食べながら、そんなことを想う旅であった。

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