ながさきプレス

第12回 「小さな春を見つけに、佐々へ」

ちいさい春を求め佐々町へ旅する

 ああ、早く春が来ないかなあ…そんなことばかり考えてしまう今日このごろ。寒さでちぢこまったカラダが少しずつほぐれて、ぽかぽか陽気に心までホワンとゆるむ、あの感じ。「ちいさい秋みつけた」の唄はあるのに、「ちいさい春みつけた」の唄はないのかな…でもこれから、ひと足早い春を見つけに行くんだもんね、なんて思いつつ、長崎市内から車を走らせること2時間半。佐世保市街よりさらに北のまち、北松浦郡佐々町に到着した。
 11年の秋に、佐世保市街と佐々町を結ぶ「佐々佐世保道路」が開通し、ぐっとアクセスしやすくなった佐々。かくいう私もその道を使い、ぴゅーんと佐々まで移動。佐々インターをおりてすぐ、「山らしい山」といった風情の古川岳が目に飛び込んできて、妙にテンションがあがる。はるばる「よそのまち」にやってきたこの感慨は、旅の醍醐味だ。

春の訪れを知らせる河津桜とシロウオ漁

 右も左もわからぬ佐々初心者の私を案内してくださったのは、佐々町役場の川崎さん。 川崎さんの車にお邪魔して、佐々川沿いに向かった。「もしかしたら、シロウオ漁の始まっとるかもしれんですよ」という川崎さんの予想通り、川沿いには漁のための足場が並び、おじちゃんたちが川に網をおろしていた。車の中から「獲れてますかー」と声をかけると、「ちょこっとね」との返事。バケツを覗かせてもらうと、体長5センチほどの透き通ったシロウオが勢いよく泳いでいた。毎年2月頃から始まる、佐々の春の風物詩・シロウオ漁。漁を始めて20年程というベテランの中村さんは、「この時期は毎年痩せるとよ」と笑う。それもそのはず、漁に使う「四つ手網」の重さは約20キロ。これを何度も上げ下げして、網にかかったシロウオをすくい上げる、なかなかハードな漁なのだ。てんぷらや塩辛が絶品だそうで、この時期は直売所などにもシロウオが並ぶとのこと。
 佐々川の春の風物詩はシロウオだけではない。散歩やサイクリングにぴったりの川沿いの道には、約2キロに渡って早咲きの「河津桜」が花をつける。「佐々は2月下旬の河津桜に始まり、3月下旬のソメイヨシノ、4月上旬のしだれ桜まで、長い期間花を愉しめるまちなんですよ」と川崎さん。これは平成16年に展開した「佐々千年さくらの里」事業のたまものなのだとか。ひと足早く始まって、ひと足遅く去ってゆく…佐々の春には楽しみが多い。

真竹谷のしだれ桜と古川岳からの絶景

 まだ時期ではないが、せっかくだからと長崎県一のしだれ桜群を見られる真竹谷へ向かった。花菖蒲で有名な皿山公園の横を走る道から、古川岳の山頂に向かって山道を進むこと約10分。約50本のしだれ桜の木が並ぶ、真竹谷に到着。深い森の中に忽然と現れる桜の広場。まだ寒々しい枝の姿だったが、さぞかし見事に咲き誇るのだろう。わざわざでも訪れる価値のある場所だ。そのまま山道を進み、川崎さんが「佐々で一番おすすめの場所」と語る古川岳の展望台へ。 佐々の町を一望する絶景に出会うには、ふもとの駐車場から長い階段を登らなくてはならない。 階段 川崎さんとともに、息を切らしながら石段を上がると、そこには絶景が…!と言いたいところだが、この日はあいにくの天候。天気の良い日は、遠く北九十九島までを望むという絶景はおあずけで、白い霧が立ち込めるばかり。ある意味神秘的かも?なんて考えていたら、「この古川岳の名は、『降る神』に由来しているんですよ」と川崎さん。古代の人々はこの山に神が降ると信じ、霊山として祀っていたのだ。最近ではパワースポットとして、注目を集めているらしい。なるほど、そう思わせるだけの荘厳な魅力が、この山には確かに存在していた。

おいしいお茶と饅頭でひと休み

 散策を終えておなかが減ったところで、ごはんタイム。訪れたのは佐々駅のすぐ向かいにある〈和喫茶息福〉さんだ。
 こちらは長崎で唯一「釜炒り茶」を作り続ける〈上ノ原製茶園〉が、「お茶の文化を守り、その魅力を伝えたい」と2年ほど前にオープンしたお店。お茶はもちろん、お茶漬けやお茶に合う甘味を味わえ、茶葉の購入もできる。 和喫茶 息福 「まずは釜炒り茶をどうぞ」とすすめてくれたのは、店主・上ノ原美佳子さん。茶器を目の前に持ってきて、実際に美味しいお茶の淹れ方を実演しながら教えてくれた。「最後の一滴が美味しい」と、丁寧にしずくを振り落とす姿が印象的。緑というよりも黄金色に輝くお茶をひと口含むと、ふわっと柔らかな香りが広がった。さっぱりとした、上品な味わいだ。  料理は、同じく釜炒り茶を使ったお茶漬けと自家製のぜんざい、飲み物がセットになった「息福セット」600円をいただく。これがまた、からだに染み入るようなやさしい味わいで、散策の疲れをほっと癒してくれた。
 そしておやつとおみやげに、佐々駅からすぐの〈ふみきり饅頭店〉さんへ。今でこそ道路沿いにたたずむが、以前は本当に踏み切りのすぐ隣に店があり、この名前なのだとか。 ふみきり饅頭店 「ふみきり饅頭」はひとつ70円。この値段もうれしいナ。「少し焼いてもおいしかとよ」と、わざわざオーブンであたためてくださった。 何だかジーン…饅頭も心もあったまっちゃう。自家製の餡を手際よく皮で包みながら、次々饅頭を作ってゆく名物おばちゃん・佐藤さん。その手元を眺めながら、あれこれ雑談していると、何だか実家でお母さんと話しているみたいな気分。ふみきり饅頭のほかにも、「かから団子」や「石がき団子」などいろんな饅頭・団子が。「これからは桜もちとか、よもぎ団子やね」と佐藤さんが言う。ちいさい春は、饅頭にも訪れているみたいだ。

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