ながさきプレスWEBマガジン

  • Vol.27 茂木一○香本家のびわのお菓子

    茂木びわの季節です。

     長崎市の南東部、橘湾に面する港町・茂木。初夏の頃、キラキラと輝く海を眺めながら、緑豊かなこの町の海岸線沿いをドライブすれば、ひと房一房ていねいに袋かけされたびわ畑の風景を目にすることができる。全国的にも名高い「茂木びわ」の収穫期、5月下旬~6月中旬頃の風物詩だ。

     茂木びわは、天保年間(1830~1843年)に長崎代官屋敷の下働きをしていた茂木村出身の女性・三浦シヲが、中国から贈られたびわの種子を貰い受け、自宅の庭に蒔いたのが始まりと言われている。本格的に栽培が始まったのは明治30年頃以降で、現在、長崎県のびわは全国一の出荷量を誇っている。

     そんなびわを、贅沢に丸ごと一つ閉じ込めたお菓子が、長崎を代表する銘菓のひとつ「茂木ビワゼリー」だ。「一口香」で有名な「茂木一○香本家」が手がけており、“地元・茂木のびわを、一年を通して味わってもらいたい”という、6代目社長・榎巍(えのきたかし)さんの想いのもと、昭和59年に誕生したお菓子だ。

     開発当初は、刻んだびわをカップに入れてゼリーを試作。しかし、光にふれて酸化したびわは、黒く変色してしまい失敗…。また、“やはりびわの実は、丸ごと食べるのが一番美味しい”という想いがあり、試行錯誤を重ねる中で、現在の“遮光性のアルミ袋にゼリーを入れる”というアイデアが生まれたそうだ。さらに、そのアルミ袋を和紙の袋で包む―これには畑で袋かけされているびわの姿を重ねているそうで、「まず外の袋を取り、びわの皮を剥くようにアルミ袋を開く。すると、つるりとみずみずしいびわの実が丸ごと現れ、そのままパクリと食べられる。そんな、実そのものを味わっているかのようなイメージが、このパッケージにつながっています」。

     そして現在、店には「茂木ビワゼリー」以外にも、「びわ最中」や「びわまん」、びわをたっぷりのせたカステラ「黄金の雫」、「びわジャム」に「びわようかん」、「びわどら」、「びわロール」などなど、茂木のびわを活かしたユニークなお菓子がずらりと並ぶ。これらのお菓子に使われるびわは、旬の時期に収穫したものを一年分シロップ漬けにし、薄皮などを全て手作業で取り除いて、加工しているそうだ。傷つきやすく、変色・酸化しやすい繊細なびわを、手間ひまかけて手作業でお菓子に仕立てているのも、全ては“茂木びわの味を、一年中楽しんでほしい”という想いがあればこそ。その美味しさは、言わずもがなだ。

     さて、もう一つ注目していただきたいのが、シンプルながらも小粋で、センスのいいパッケージ。これは、榎社長の今は亡きお母様がデザインされたそうで、長崎の方言をちりばめた包装紙など、洒落っ気に溢れている。きっと当時は、相当ハイカラなお母様だったのだろう。変わらぬデザインは今見ても十分新鮮で、素敵だ。

     長崎らしいおみやげに、贈り物に。もちろん自分のおやつにも。今が旬のびわのお菓子、ぜひご堪能あれ。

    茂木一○香本家 もぎいちまるこうほんけ
    【本店】 長崎市茂木町1805 TEL:095-836-1919
    【新地店】 長崎市籠町4-20 TEL:095-820-5963
    http://www.mogi105.com/
    「茂木ビワゼリー」324円、「びわもなか」162円、「びわまん」162円、「黄金の雫」756円ほか

    Return Top