ながさきプレスWEBマガジン

  • 長月(ながつき)

    教えてくれた人

    早稲田 佳子(ワセダ ヨシコ)さん
    茶道(表千家茶道)や料理(懐石料理)などを学べる〈花滴庵〉主宰。長崎県内で和の文化を伝える教室を開いているほか、季節の茶会などを行っている。
    花滴庵(かてきあん)
    道教室(表千家流)や料理教室(懐石料理)、挨拶の仕方などを学べる和の講座があり、和の文化を通して、美しい作法や暮らしに使える知識を習得できる。

    秋の七草について教えてください

    「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種の花」
    「萩の花 尾花葛花 なでしこの花 をみなえし また藤袴 朝顔の花」
    山上臣憶良

     秋の七草は、万葉集の中で山上臣憶良(やまのうえのおくら)が詠んだ歌に由来します。 「萩(はぎ)の花」は万葉の頃から花見が行われ、萩の枝を集めて箒(ほうき)にしたり篭(かご)を編んだそうです。「尾花(をばな)」はススキで魔除けの意味があります。 「葛花(くずはな)」は取り出した葛を食用として使ったり、葛根湯(かっこんとう)を薬として飲んだりしました。「をみなえし」は根を敗醤根(はいしょうこん)といって、消炎、排膿作用があります。「藤袴(ふじばかま)」は昔、痛み止めとして使ったり、燻(いぶ)した香りを衣服に炊き込んだりしていました。「朝顔の花」は、桔梗(ききょう)という説が濃厚です。春の七草と違ってお粥などで食べることはないですが、季節を感じるものとして観賞したり、お月見で飾ったりするといいでしょう。

    秋の定番といえばお月見。自分でお月見をするために、どのような準備をしたらよいでしょうか

     秋の七草を飾り、十五夜の前日にあたる待宵(まつよい)からお月見の準備に入ってください。例年、寺町の興福寺では、お月見の宴が催されます。今年は十月十二日。お庭から見上げるお月様は満月ではなく、上弦の月です。秋の夜長を感じつつ、お月様の呼び名を覚えるのも楽しいのではないかと思います。

    綺麗な月が見ることができるような大まかな目安の日はありますか

     お月見には「十五夜」と「十三夜」という特別な日があります。中秋は名月の旧暦の八月十五日で十五夜と言われており、今年は九月十九日です。里芋やさつま芋の収穫の時と重なるようで「芋名月(いもめいげつ)」とも呼ばれています。里芋は小さい芋がたくさんできる事から、子孫繁栄の作物としてお月様にお供えし、農作物の収穫を神様に感謝しました。お供えのお団子は十五夜にちなんで数を十五個にしたり、まん丸ではなく芋の形に似せてちぎったような感じで作ることもあります。 の影響が強い長崎では、クルミや松の実が入った「月餅(げっぺい)」も一緒に飾ります。
     中秋の名月の後には「後(のち)の月」と呼ばれる十三夜があります。旧暦の九月十三日で、今年は十月十七日。お豆や栗の季節となり、「豆名月(まめめいげつ)」や「栗名月(くりめいげつ)」とも呼ばれるようです。十五夜と十三夜は、どちらも古くから伝わる大切な神事です。お月見は必ず十五夜と十三夜、二回ともすることがしきたりとなっていて、片方だけ行う「片月見(かたつきみ)」は縁起が悪いため避けるそうです。

    五節句のひとつ「重陽の節句」とはどのようなものですか

    【五節句】…中国では、「易の陰陽」というもので偶数を「陰」、奇数を「陽」としています。平安時代にこれが中国から日本へ伝わって以来、月日に「陽」の数字が重なる時をご節句とし、行事が行われてきました。元々は季節の旬の植物から生命力をもらい邪気を祓うという目的から始まったものです。

     「重陽の節句」は、旧暦の九月九日にあたります。五節句の説明にあった「易の陰陽」の「陽」の中でも一番大きな数にあたる「九」が二つ重なるため、おめでたい日とされているようです。「重陽の節句」では季節の花などを飾り、菊の花を浮かべた菊酒を飲むことで、邪気を祓い長寿を願います。「五節句」の中でも最も大切な行事となりました。
     また重陽の節句の「御九日(おくんち)」に合わせて長崎の諏訪神社が「秋の大祭」を寛永三年から始めました。当時中国人がこの大祭の名前を独自に「九使廟祭(チュウシィミャオジィ)」や「九使神祭(チュウシィミャオジィ)」と名付け、九使をクンチーと発音したことから「くんち」と呼ぶようになったとも言われています。これが毎年十月に行われる、長崎の伝統行事「おくんち」にあたります。

    長崎の地で古くから行われてきた中国盆会(ちゅうごくぼんえ)はどのようなものですか

     昔の中国盆で旧暦の七月二十六日~二十八日までの三日間、中国福州人の菩提寺、崇福寺で賑やかに繰り広げられます。中国盆の初日は僧侶がお経を上げ、釈迦や尊者の霊を慰めます。中日は再びお経を上げて祖先の亡者や鬼を呼び、最終日は鬼に山海の珍味や野菜、果物、お菓子などを供えて、「金山」「銀山」と呼ばれるお金の山を燃やし祖先の霊を弔う中国独特のお盆です。華僑の人だけでなく一般の人も参加ができる行事です。
    ※今年は九月一日~三日の予定。

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