ながさきプレス

第22回 「たのし!平戸さんぽ」

平戸ロマンに憧れて… 新年最初の、ふらり旅

 「ふらり。旅する長崎」、イラストコラムという形での連載になり、おかげさまで早(ほんとうに早い!)一年です。拙い絵も、少しは上達しているとか、いないとか…?2014年もゆるマニアックな旅をのほほんとお届けして参りますので、何卒よしなに。
 さて、新年一発目の旅先は平戸! 本コーナー初、念願の平戸上陸である。というのも、2013年3月号を覚えておいでだろうか。表紙を飾ったのは松浦家に伝わる、『百菓之図(ひゃっかのず)』。100のお菓子の図案がおさめられた、何とも粋な本である。その愛らしさとロマンたるや…胸キュン必至。いつかゆっくり、平戸のまちを歩きたいと常々思っていたのだ。というわけで今回はまず、『百菓之図』を所蔵する松浦史料博物館へ向かった。

うっとり… 私邸を利用した博物館

 ここで少し、平戸藩と松浦家の歴史を簡単に説明しておこう(と言いながら、自身のおさらいも兼ねて…オホン)。江戸時代、平戸藩6万石余りを治めた平戸藩主松浦家。現当主は41代目で、その出自は平安時代までさかのぼる。鎌倉・南北朝時代(12世紀後半~15世紀前半頃)まで、松浦家は平戸島北部や五島の小値賀などを領する海の武士団・松浦党の一氏にすぎなかったが、室町時代に入り勢力を拡大。肥前北部及び壱岐を征する戦国大名となった。1587(天正15)年、豊臣秀吉の九州平定の際、当時の領主・松浦鎮信が領地を認められ、江戸時代に入り平戸藩が確立した。
 松浦史料博物館は、そんな松浦家が明治26年に建てた私邸を利用した博物館。長崎県で最も歴史ある博物館とされる。今回は学芸員の久家(くが)さんに、館内を案内していただいた。
博物館  まずはもう、建物そのものにうっとり…! 「私邸」というだけあり、普通の博物館とは、ひと味もふた味も違う。本来は邸宅であるため、展示品はガラス戸を挟んだ畳の間、あるいは展示ケース等に並べられているのだが、このガラス戸やケースの意匠が凝っている!明治や大正期特有の、和と洋が入り混じるノスタルジックな雰囲気を壊さぬよう、特注で作られているのだ。まさか展示品を差し置いて、展示ケースにこうも感動させられるとは、ふ、不覚…! 天井から下がるシャンデリアなども素敵で、見どころに事欠かない。

知れば知るほど深みへ…!? 松浦静山というひと

 松浦史料博物館の収蔵品は実にさまざま。古くより海外交流の歴史を持つ平戸ならではの貿易関連や、キリスト教関連の資料などが多い。また松浦家歴代当主には、個性豊かな人物も少なくないため、そうした人物にまつわる資料や美術品も多く収蔵している。
松浦静山  そんな中、パッと目に飛び込んできたのが、一冊のスクラップブックのような本。「それは江戸後期、34代当主・松浦清(きよし)(号・静山(せいざん))が収集した、絵暦(えごよみ)のスクラップ集です」と久家さん。か、か、かわいすぎる…! その後はもう、静山コレクションにやられっぱなし。このお方、知れば知るほど全貌が見えない、あらゆる分野に博学な文化人。(しかも武道にも精通)。16歳で藩主になり、20歳の時に家臣の教育のため、城内に藩校維新館(はんこういしんかん)を開校。と同時に、「楽歳堂(らくさいどう)文庫」という現代の博物館のような施設を設置する。海外関係の資料から、日本人のルーツを探ろうとしたアイヌ関係の資料、洋書、地球儀、美術品に発掘品と何でもござれ!静山の時代、日本各地でこうしたコレクション収集が行われたそうだが、現存するものでは静山コレクションが国内最大といわれているそう。「現代の学者がよって集まっても、静山の全てを紐解くのは難しいでしょうね…」と不敵に笑う久家さん(笑)。静山が収集した品々は歴史的・史料的価値はもちろん、美術的に見ても悶絶もの。(おおげさ?いえいえ、本当に素敵なのです!)ちなみに静山自身も絵の才に秀でていたそう。静山の著書『甲子夜話(かっしやわ)』の中で、河童の大ファンであることを語っており、『河太郎図』なるユーモラスな河童絵巻も残している。 ※というわけで、冒頭のイラストの河童は、『河太郎図』より模写。雨に打たれ、河童がカッパを着る(失礼!)図でした。(笑)

もちろん、 平戸のおいしいものも!

 平戸のおいしいもの  久家さんと博物館を一周。興奮さめやらぬ中、お次は博物館に隣接する茶室「閑雲亭(かんうんてい)」へ。お抹茶と平戸銘菓のカスドースをいただく。ふと、視線を上げれば平戸城が。しみじみ、心穏やかな時間が過ぎてゆく…。
 大満足で博物館を後にし、てくてくと平戸の城下町へ。平戸の街や通りは、江戸期とほぼ変わらないそうで、古地図を見ながら街を歩くのも面白そうだ。と、途中小さな、昔ながらの商店に出会う。「まるや商店」。看板には「たいやき・たこやき」の文字。しかもたいやき80円、たこやき5個100円。なんと可愛らしいお値段。そして次々と、地元の人が立ち寄ってゆくではないか…となれば、もちろん寄り道(笑)。いい意味で期待どおりの、たこ焼き然としたたこ焼きを食べながら話を聞けば、50年ここで商店を営んでいるそう。駄菓子もあって、平戸のちびっ子たちの遊び場なのだろうなあ。小銭を握り締めて駄菓子を買いに行くのって、本当にワクワクするんだよネ。
 最後は老舗の和菓子店「熊屋」さんで、平戸名物の牛蒡餅(ごぼうもち)をおみやに。昔は白いお砂糖を庶民は使えなかったため、黒砂糖で作っていたそうな。そして茶席などでは、長~い一本のお餅をそのまま供し、食べるときに切っていたそうで、「牛蒡」の名はその色・形に由来するそうですヨ。
 「ああ、平戸って素敵」といいつつ、お気づきだろうか。平戸城やオランダ商館など、名所と呼ばれる場所に訪れていないことに…(ハッ!)。というわけで、平戸旅第2弾、いつか必ず!

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