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  • ゲンカイツツジ(対馬)

    初春の花々を求めて野山へ
    初春の花々を求めて野山へ

     

     対馬は面積の89%を森林が占める自然豊かな島だが、冬は北西の乾風が厳しく、常緑樹はジッと身を潜めて寒さに耐え、落葉樹はまるで枯れ木のように葉を落としている。その寂しい風景に最初に彩りを添え、春の訪れを告げるのが「ゲンカイツツジ」だ。日の当たる岩場などを好み、葉が展開する前に淡紅色の花を枝先に数輪咲かせ、冬枯れの山の斜面でひと際目を引く。ほかの地域では標高500mを超える山地に自生するが、九州最北端の対馬では島の中央に広がる浅茅湾沿岸でもよく見られる。ゲンカイツツジが咲くころ野山に入ると、ヒトリシズカやフデリンドウ、ナンザンスミレなどの可憐な野草が懸命に花を咲かせている。
     対馬には、名前の付けられた山が日本の市町村で最多の177もあり、気軽に歩ける名山がいくつもある。古代山城・金田城が築かれた「城山」、文禄慶長の役に際して山城が築かれた「清水山」、明治期に砲台が築造された「姫神山」などは、「霊峰・白嶽(518m)」ほどハードではなく、自然と歴史を同時に楽しむこともでき、オススメだ。
     ゲンカイツツジが咲いたら、野山へ行こう。トレッキング(軽登山)は、日本系植物と大陸系植物が共生する対馬の雄大な自然と、国境の島ならではの独自の歴史を体感できる最良の方法なのだ。

     

    profile

    西 護 対馬観光物産協会に勤務して、今年で11年目。国境の島・対馬に、家族や犬、猫と共に暮らしている。趣味は、対馬の山岳・砲台・神社などの情報を収集・発信すること。2017年に発行された『長崎県の山』(山と渓谷社)で、対馬の山を担当している。

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