ながさきプレスWEBマガジン

  • 手作業でつくられる「さとうのしお」(五島)

    「昔、半泊は船で行くところやったとー。車で行ったことはなかー」と、戸岐生まれのお年寄りが教えてくれた。その言葉の通り、戸岐大橋を渡って観音平を過ぎると、途端に道幅が狭くなった。福江港から車でわずか20分あまりで、どこか秘境に迷い込んだ気分になった。陸伝いに山道を行くより、船で行く方がはるかに楽で早かった昔の暮らしがしのばれる。

     

    この地で、塩を作りコッテージを経営している佐藤さんご夫妻を訪ねた。

     

    ミネラル分をたっぷり含む「さとうのしお」は、目の前に広がる半泊湾の海水から生まれる。満潮時にポンプで汲み上げた海水を、レンガを積んだ手作りの塩かまどでゆっくりと時間をかけて焚く。塩分濃度がある程度上がったところで、一度かまどから下ろして塩化カルシウムなどの不純物を沈殿させる。その後、上澄みをかまどに戻し、もう一回焚き上げると、塩の結晶ができてくる。この塩を天日干しにして出来上がりだ。

     

    塩作りに欠かせない大量の薪には、はじめ苦労したが、最近は知り合いの人たちが持って来てくれるので大助かりとのこと。

     

    気がつくと2時間という時が過ぎていた。五右衛門風呂のあるコッテージについては、またの機会に。

     

     

    profile

    矢口 美保子  五島市在住。趣味は、茶道と読書。「軽自動車のマニュアル車に乗っています」と言うと、ほとんどの人が驚くという。高校時代の剣道仲間からの突然の電話により、島のコラムを書くことに。これには、本人が一番驚いているのだとか。

     

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