ながさきプレスWEBマガジン

  • Vol.02 野田竹細工店の竹かご

     竹かごを片手に、市場で晩ご飯のお買い物―そんな姿が珍しくなったのは、いつの頃からだろう。買い物、収納、水切り、物干し、運搬、漁…。ひと昔前まで家庭はもちろん、土建仕事や農業、漁業にも「かご」は無くてはならない生活必需品だった。

    しかしプラスチック製品が世に現れてからは少しずつ需要もなくなり、今となっては竹細工屋も随分と少なくなった。ここ〈野田竹細工店〉も、佐世保で5、6軒はあったという竹細工店で最後の店だ。三代目の野田さんは77歳となった今でも、作業場に一人座っては黙々と手を動かし、毎日朝から夕方まで竹と向かい続けている。「職人には終わりがなかとよ。ずっと勉強さ」と語る野田さんの手さばきは、素人目にも惚れ惚れとするほど美しい。

     

    竹を割り、薄く裂き、皮を一枚はぐ「磨き」という工程を踏まえ、やっと編み始める。用途や場所によって様々な編み方を使い分け、ひとつひとつ表情の異なるかごが出来上がっていく。まだ青さの残る竹かごは香りも良く、丁寧に磨かれた肌がすべすべと心地よい。ビニールに比べると当然重たいが、少々のことでは倒れない安定感と丈夫なつくりに、長く付き合える頼り甲斐と愛着を感じる。使い込む程に綺麗な飴色に色づく経年変化も竹かごならではの楽しみだろう。

     

    「ただずっと、暮らしに役立つものをつくり続けてきただけ」という野田さん。「日本民芸協会賞」などを受賞し、その手仕事を評価されても、地域に根ざした「竹細工屋さん」としての姿勢は変わらない。だからこそ飾って見るのではなく、生活の中でどんどん使うほどに、その魅力を感じられるはずだ。

     

    つくり手:野田利治 NODA TOSHIHARU
    1935年(昭和10年)佐世保生まれ。野田竹細工店の三代目で、50年以上竹細工をつくり続けている。平成17年に、釣りに用いる「段物魚篭(びく)」で、日本民芸協会賞を受賞。

     

    野田竹細工店
    県外から足を運ぶ人も多く、野田さんの手仕事を間近で見ることができる。
    ・「買い物かご」7,000円前後~(大きさにより異なる)

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